これだけは知っておきたいロードアイランド州の歴史

東海岸にある米国一小さな州、ロードアイランド。日本ではあまり知られていないロードアイランドですが、アメリカ史の中で、重要な役割を果たしてきました。これだけは知っておきたいロードアイランドの歴史についてまとめてみました。

 

1.  宗教の自由を謳い「ならず者の島」と呼ばれたロードアイランド

ロードアイランドは、アメリカ13植民地の一つで、1636年に建設されました。その建設の話をする際に欠かせないのがロジャー・ウィリアムス(Roger Williams)という反骨精神溢れる牧師です。Roger Williamsは、イギリスからピューリタンの牧師として1631年にマサチュセッツ湾植民地に渡りましたが、次第に当時の植民地政府と教会に強い反感を抱くようになります。まず、当時の植民地が、アメリカ先住民族から土地を強奪していることを強く批判します。また、マサチュセッツ湾植民地では、ピューリタン以外の宗教が公では認められておらず、礼拝への参加が義務づけられていたりと信仰が強制されていること、そして教会が政治的に大きな力を持ちすぎていることを非難しました。"Forced worship stinks in God's nostrils" (強制された崇拝は、神にとって不愉快だろう)と発言し、また"separation of church and state(教会と国家の分離)"を主張しました。こうしたことからマサチュセッツ湾植民地の権力者から嫌われ、Roger Williamsは追放されることになります。14週間かけて南へ移動し、たどり着いた土地で、アメリカ先住民族のナラガンセット族から土地を譲り受け、プロビデンス植民地を設立し、住民には信教の自由を保証しました。ちなみに、Roger Williamsは言語的な才能もあり、アメリカ先住民族の言語に関する初めての英語の本"A Key into the Language of America "(「アメリカ現地語案内」)を執筆しています。Roger Williamsはプロビデンスに、米国で初めてのバプティスト教会を設立します。やがて、ロードアイランドには、他の植民地ではあまり受け入れられていなかったクゥエイカー教徒やユダヤ教徒達がやってきます。そのため、ロードアイランドには、米国で初めてのユダヤ教の会堂もあります。こうした宗教的マイノリティーの集まるロードアイランドのことを、マサチュセッツの宗教家コットン・マザー(Cotton Mather)は、"The receptacle of all sorts of riff-raff people, and is nothing else than the sewer of New England" (「色んなろくでなしの連中が集まる場所、ニューイングランドの下水にほかならない」)と表現しました。また、こうしたことからロードアイランドは、Rogues' Island(「ならず者の島」)とも呼ばれました。

写真)丘の上にあるRoger Williamsの像は、プロビデンスを見渡している


2. アメリカで一番最初にイギリスからの独立を宣言したロードアイランド

アメリカが独立宣言をしたのは1776年の7月4日。しかし、その二ヶ月前の5月4日に、ロードアイランド州はアメリカで初めて、イギリス王室に対する忠誠を放棄し、実質的に独立を宣言しました。


3. アメリカ産業革命発祥の地、ロードアイランド

アメリカ産業革命の始まりは、イギリスから来たサミュエル・スレーター(Samuel Slater)が、1790年にロードアイランド州のポータケット(Pautucket)に水力紡績機を作ったことだといわれています。Slaterは、もともとイギリスで生まれ、10歳の時からリチャード・アークライトの開発した水力木綿製糸工場で働き、21歳で渡米し、米国に水力紡績機の技術を持ち込み、成功した人物です。こうしたことから、アメリカでは「産業革命の父」、イギリスでは"Slater the traitor"(「裏切り者のスレーター」)と呼ばれることがあります。18世紀、ロードアイランドはアメリカ産業の中心地の一つとして機能していました。


Slaterの綿糸工場は、今博物館として一般に公開されています。

Slater Mill Museum

写真)I-95のExit 27には、Birthplace of the American Industrial Revolutionと書かれた標識が立っています。